『東京のメダカ事情』
葛西臨海水族園 多田 諭
カンコロ、メンパチ、コメンチョ。これらは全てメダカのことです。メダカには、日本に5000もの地方名があります。それだけ日本人には親しみのある身近な魚であったということでしょう。かつてどこにでも見られたメダカですが、田んぼの減少や用水路の整備など、生息環境の変化によってすっかり数を減らしてしまいました。今では環境省のレッドリストにも掲載され、絶滅の恐れのある生物の仲間入りをしてしまいました。
もちろん東京でもメダカの減少は顕著です。そう聞くと、放流して増やしたら、と考える方もいるかもしれません。でも、ちょっと待った!各地のメダカには長い年月の間にその地域の環境での暮らしに合った性質が備わっています。他の地域のメダカの放流によって、もとから暮らすメダカ達が持っている、生きていくための大事な性質が失われる可能性もあるのです。メダカに限らず、生物を安易に放流することは慎まなければなりません。
都立動物園水族園では、平成18年から東京のメダカの保全活動に取り組み、皆さんから都内のメダカの生息情報を寄せてもらっています。調査してみると、そこは都市部の小さな池や郊外の小川などさまざまで、わずかに残された環境の中でメダカ達が細々と暮らしていることが分かりました。メダカは小さく、地味で目立つ魚ではありません。情報を寄せてくれた方々は、日頃から身近な自然に目を向けていることがよくわかります。東京のメダカ達は今後もこのようなまなざしに支えられていくことでしょう。
メダカの保全活動については
http://www.tokyo-zoo.net/medaka/index.html