『コアラ来日30周年』
多摩動物公園 永田 典子
コアラが初めて日本に来たのは1984年。それから30年がたちました。
当初は東京都多摩動物公園と名古屋市東山動植物園、鹿児島市平川動物公園の3園にそれぞれオス2頭が送られました。多摩動物公園の2頭は、公募の結果「トムトム」(東京都の夢)、「タムタム」(多摩の夢)と命名されました。テレビや写真でしか見ることができなかったコアラへの期待がこめられていた名前だと思います。公開当時はコアラ館から正門まで長蛇の列ができる程でした。その後、国内では9か所の動物園で300頭以上のコアラが飼育されてきました。
コアラと言えば寝ている姿を思い浮かべることが多いのではないでしょうか? コアラの飼育担当者になって一番の悩みは動いているところを観察する時間が少ないことです。1日に20時間もの睡眠を必要とするコアラがあまり寝ないとなると心配になりますが、動かないと健康なのか調子が悪いのか判断ができません。そのため、夜間の行動を録画して観察したり、ユーカリの採食量をチェックしたり、日々の細かな記録が大切になります。
また、コアラを飼育している動物園が毎年集まり、コアラ特有の病気や飼育管理方法、ユーカリの栽培等、情報交換のための会議を開催しています。さらに、単独の施設だけでは繁殖を維持するのが難しいため、動物園どうしで個体を積極的に移動させ、日本の動物園全体でコアラの飼育を長く続けていく努力をしています。
近年は飼育数が減少傾向にあり、ピーク時の半数ほどになっていますが、数を増やすべく、動物園どうしの連携を一層深め、飼育と繁殖に取り組んでいます。コアラの愛らしい姿が日本から消えないようにしていきたいと思います。