『砂漠の砂に大はしゃぎしたフェネックたち』
井の頭自然文化園 高松美香子
世界で一番小さいキツネのなかま、フェネックは、おとなでも体重は1kg前後しかありません。体温調節に役立つ大きな耳や、砂の上も歩けるように毛でおおわれた足の裏など、暑い砂漠でのくらしに適応した身体をしています。そんな砂漠でくらす野生動物としてのフェネック本来の姿を皆さんに見てもらいたいと思い、昨年の夏、放飼場の改修を行いました。外国の動物がくらす環境を全く同じように再現することはできませんが、手に入るものでなるべく自然に近づけた展示になるよう工夫しました。
新しく入れた砂漠風のベージュ色の砂は、ゴルフ場のバンカーや水処理のろ過に使うために輸入されている韓国産の珪砂です。植え込み内と運動場のまわりは、サハラ砂漠の約70パーセントを占めるという礫砂漠の雰囲気を出すため、岐阜産の茶色いチャート砕石を敷き詰めました。
改修後、フェネックたちを放飼場に戻したところ、砂漠出身の動物としての血が騒いだのか、ギャーギャー鳴きながら追いかけっこをしたり穴を掘ったり、ベタッと寝転んで全身で砂の感触を味わったり、映画の早回しのようにコミカルに動き回り、大はしゃぎとなりました。とにかく楽しそうなフェネックたちの動画を「東京ズーネット」に掲載し、ツイッターで紹介したところ、リツイートが3000を超える大反響となりました。
さすがに現在は落ち着いていますが、ほとんど寝て過ごす日中も、全身を伸ばして砂に浸って?いたり、顔を砂にうずめていたり、実に気持ち良さそうな寝姿をみせてくれています。また、寒さの苦手なフェネックたちのために、子豚用の保温マットを敷き込んで、冬でも砂の上でくつろいでもらえるよう工夫をしています。