保護されたムササビ「葉月」
井の頭自然文化園飼育展示係 浅見 準一
ムササビは本州・四国・九州に生息する、日本の固有種です。最大の特徴は、前足と後足の間に皮膜と呼ばれる膜を広げることでグライダーのように滑空して、樹と樹を移動することです。高木が多い神社の鎮守の森に生息することが多く、都内では高尾山薬王院が有名で、観察会などが開かれています。
当園に生後1ヵ月ほどのムササビ「葉月」がやってきたのは、残暑厳しい2016年9月初旬でした。このとき体重はまだ500gほどでした。
彼女が保護されたのは7月下旬、五日市で、目も開いていなかったことから、産まれて間もない時期に親から離れてしまったと思われます。八王子の動物病院で1ヵ月ほど生育された後、井の頭自然文化園にやってきました。
与えていたのは子犬用ミルク3回のみでしたが、徐々に離乳を進め、10月に2回、12月には1回と回数を減らしていきました。それに伴い固形物を少しずつ与え始め、りんごやサツマイモを中心に、柿・どんぐり・栗などの季節物、野生下で主食となっている枝葉として、園内で採取できるサクラ・シラカシ・ネズミモチ・ヤマモモなどを与えました。12月下旬には完全に離乳し、2017年1月1日現在、900gを超えるほどにまで成長しています。
野生のムササビは完全夜行性のため、比較的身近に生息していながら、なかなかその姿を見ることはできません。間近で見て、触り、感じてもらい、その生態を知ってもらえるよう、環境教育の観点から何かできることはないかと考えています。