第三回議事録

開催日時  平成14年2月8日(金)14:30~16:30
開催場所  台東区民会館

第3回会議風景

議事

 今回の流域連絡会は「隅田川の水質」をテーマに開催しました。都民委員16名、行政委員13名が出席し、臨時委員として参加した東京都環境局及び 下水道局の担当者から隅田川の水質改善に関する取組みについて基調報告が行われた後、都民委員と行政委員による意見交換が行われました。


■会議冒頭に、座長と副座長から挨拶があった後、事務局より平成14年1月の人事異動に伴い、新委員となった東京都第六建設事務所の大野課長の紹介がありました。
 続いて、今回の臨時委員として、隅田川の水質改善について基調報告を行う東京都環境局環境評価部広域監視課の今本課長補佐と東京都下水道局建設部土木設計課の伊藤課長の紹介がありました。

■今本補佐からは、隅田川の水質の経年変化と今後の水質改善における課題などについて報告がありました。

 まず、隅田川の特色としては、河川勾配が小さく、水が停滞しやすいこと、感潮河川といわれる海水の遡上による影響を受ける河川であること、河川の流量のうち6割程度を下水処理水が占めていることなどが挙げられます。

隅田川のBOD

 隅田川の水質は、昭和30年代頃に比べて、下水道の普及などによりかなり改善されており、それに伴って隅田川に適用される環境基準も厳しくなってきています。
 しかし、平成13年8月には魚の浮上事故が発生しました。
 この原因は、川の中の溶存酸素が不足したためと考えられます。川の中の酸素は、空気との接触面から入ってきますが、水中に有機物が多いと微生物が発生 し、酸素を消費してしまいます。大雨の後などに川の水が攪乱されると、河床に堆積していた有機物が拡散して酸素が消費され、酸素不足のために魚が死んでし まうという事態となります。
 もう一つの課題としては、アンモニアの濃度が高いということです。下水道の普及に伴い、アンモニア濃度は低下してきましたが、多摩川や神田川と比較する と高い値となっています。アンモニアは、魚毒と言われ、魚に影響を与えるケースがあります。これを改善するには、合流式下水道の改善や下水道の高度処理な どを進めていくことが必要です。

■続いて、伊藤課長より隅田川の水質浄化における下水道の役割と今後の取組みについて報告がありました。

 下水道の整備により、隅田川の水質は着実に改善されてきました。
 歴史的に見ると、東京の下水道は道路が狭いことなどの理由で、明治の時代から合流式を採用しており、隅田川流域では100%が合流式となっています。

解説図(下水道)(貯留施設がいっぱいになるまでは、河川等に放流されない。晴天時時間最大汚水量(Q)の3倍まで処理場へ)

 合流式では、雨の日に、しゃ集管を通って処理場へ流れる容量以上の雨水は汚水が混じっていても河川へ流出(越流)してしまうという欠点があります。このため、下水道局ではこのしゃ集管の容量を従前の晴天時汚水量の二倍から三倍に拡充する事業を進めています。また、降雨時の初期に道路面や下水道管内のゴミが一挙に流れ出るため、この初期の雨水を貯留する施設の建設も合わせて進めています。
 また、家庭等からの排水に油分があると、下水道管内部に付着してしまいます。これが豪雨時にはがれ落ちて、雨水吐からオイルボールとして流れ出してしまうという問題があります。このため、下水に油を流さないように呼びかけるキャンペーンを展開しているところです。
 一方、下水道の高度処理については、従来の下水処理の手順に加えて、数段階の工程を追加し、下水に含まれる有機物やアンモニア、リン等をこれまで以上に除去する施設整備を進めています。ただし、施設を建設する用地と多額の費用が必要となることから、技術開発を進めるとともに、段階的に施設建設を進めていきます。

質疑応答

(都民委員)合流式下水道において、降雨時に、汚水の混じった雨水が流れ出るのは、年間何回くらいあるのか。また、合流式下水道の改善事業により、どの程度減少するのか。

(行政委員)詳細な調査を実施していないので、具体的なデータはありませんが、推定では、1時間当りの降雨量が2mm以上になると河川に雨水が流れ出してしまいます。東京では1時間当り2mm以上の雨が年間50回程度あります。
合流式下水道の改善事業として、しゃ集管の容量を増やしたり、貯留施設を整備することにより、1時間当り3mm程度の雨と初期雨水は処理場で処理できることになります。このことにより河川に流出する回数は年間30回程度になると考えています。

(都民委員)河川を汚さないためには、都民自身が河川を汚さないように、油を流さない努力が必要であり、同時に行政によるPRも重要である。

(行政委員)家庭等からの排水に含まれる油分は、排水時には高温ですが、下水道管内で冷えて固まり、管に付着してしまいます。

数年間油を流し続けた下水管

 このため、下水道局では「油・断・快適・下水道」のキャンペーンを展開し、家庭や飲食店に油を流さないように呼びかけています。今後とも啓発活動に努力していきます。

(都民委員)水質に関するデータや資料は、なるべく詳細かつ具体的に委員に配布、提供して欲しい。

(行政委員)今回の連絡会では、パソコンを用いたプレゼンテーション等を中心に、水質改善の取組みの概要を説明することに重点を置いたため、詳細なデータを十分に提供できなかったという事情があります。
 今後の連絡会では、事前にデータ等の提供に努めていきます。

(都民委員)岩淵水門付近において、荒川と隅田川との水の出入りはどうなっているのか。

(行政委員)隅田川の浄化用水としては、利根川から武蔵水路を通じて新河岸川にポンプで最大約23tの水が流れ込んでいます。岩淵水門は常時開いていますが、荒川から隅田川への流入量についてはデータを持ち合わせていません。

この他に、次のような意見がありました。

  • 東京都は隅田川を東京の顔として位置づけており、この流域連絡会においても、データの提供を積極的に行って欲しい。
  • 雨水吐からの流出回数や河川水質のモニタリング調査の結果などは、随時連絡会の中で提供して欲しい。
  • 大雨の後に、河床の有機物が拡散し、魚が死ぬという説明であったが、必ずしも雨が降らなくても魚が死ぬという事故が過去にはあった。原因は他にもあるのではないか。
  • 河口部付近で、最近青潮を目撃することがある。どのような現象なのか明らかにして欲しい。
  • 隅田川の水質は、決して良くはないが、周辺の河川と比べて特段悪いという状況にはない。

次回は、「隅田川の整備について」と再度「隅田川の水質」をテーマに、平成14年6月頃に開催する予定です。

降雨時に役立つ情報

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