井の頭池だより30 10月

2018年10月26日(金)

かいぼり隊研修 ~行徳鳥獣保護区編~

井の頭かいぼり隊の今年度第2回目の研修が10月6日(土)に実施されました。
今回の研修では、湿地の管理について学ぶために千葉県市川市にある行徳鳥獣保護区に行ってきました。

行徳鳥獣保護区は、かつて東京湾岸に広がっていた湿地環境の復元を目指して整備された区域で、水鳥をはじめとして様々な湿地帯生物が生息し、自然学習の場としても利用されています。水路で東京湾(三番瀬)とつながっているため、海の生き物も保護区にやってきます。

行徳鳥獣保護区
この行徳鳥獣保護区で湿地再生や管理に携わっている、認定NPO法人行徳野鳥観察舎友の会スタッフである野長瀬雅樹さんと佐藤達夫さんにお話を伺いました。

午前は保護区の中を野長瀬さんに案内していただき、午後は佐藤さんも加わり、管理作業を体験させていただきました。

埋立後に造成された保護区は、当初草もまばらな荒地でしたが、数年後にはヨシに覆われた草地となりました。その後水鳥が利用できる環境を整えるために、陸地部に棚田や池を造成し、水路で海へとつながる湿地帯として再整備を行いました。
現在では、鳥たちが運んだ種から育った木が育ち、樹林化している箇所もあります。木本が40種、サクラ400本のほか、トベラ、エノキ等が自生しているそうです。
樹林化している場所も
保護区内にはダイサギやカワウといった鳥類やカワアイやオキシジミといった貝のほかに、ベンケイガニ等たくさんのカニを観察することができました。20種近くのカニが生息しているそうです。カニ捕りに夢中になる隊員の姿も。
トビハゼとヤマトオサガニ
ベンケイガニ
砂浜にいたコメツキガニ
スマイルマークに見えるアカテガニ
保護区では、シギやチドリといった水鳥が利用できるように湿地の整備を行っています。その湿地環境の一つとして田んぼがありました。田んぼでは古代米を育てており、丈が長めの種を使用して、加工したり、屋根に敷いたりして利用しているそうです。
古代米の田んぼ
実りの時期でした。
保護区内のほかの場所では、水中に酸素を供給するために水車を回して、水鳥のすむ環境を整えているところもありました。水中の酸素が増えることでプランクトン等が有機物を取り込み、それをエビや小魚が食べ、さらにそれをサギやシギが食べるという生物による水の浄化に取り組んでいました。
水車
この日は見事な快晴で気温も高く、はやく水に入りたそうにしていたかいぼり隊もちらほらいました。お昼休憩をはさみ、午後はいよいよ管理作業の時間です。
作業は、水路の草刈り&ゴミの除去とヨシ刈りの2チームに分かれて行いました。

水路チームは、海とつながっている水路周りの草を刈り払い、ゴミを集めていきました。水路周りがさっぱりとして広がり、水の流れが良くなりました。
水路チーム(Before)
水路チーム(After)
ヨシ刈りチームは胴長を装着し、長いカマを手にヒメガマ水の中へ。水に入ると冷たくて気持ちよく、どんどんヨシを刈っていきました。刈った水草を浮島状に仕立てたところ、かいぼり隊がのっても大丈夫なくらいの量になりました。この浮島には、翌日アオサギが魚を食べに飛来したそうです。
ヨシ刈りチーム(Before)
ヨシ刈りチーム(After)
カイツブリ気分
刈った水草の浮島に飛来したアオサギ
(撮影:行徳野鳥観察舎友の会)
とてもいい天気の中、自然観察会、管理作業体験と充実した一日となりました。受け入れてくださった行徳の皆さま、ありがとうございました。
1日お疲れさまでした!

2018年10月16日(火)

速報!井の頭池のトンボ増加!

井の頭池では生物や水質の状況を把握するためにさまざまなモニタリング調査を行っています。かいぼり隊による今期のトンボ調査が終了しましたので速報として集計結果をお知らせします。
調査は5~9月の各月1回ずつ、トンボが多く見られる晴天の日に実施。池の周囲をゆっくり歩き、トンボの種類、個体数、発見場所などを記録しました。

とにかくたくさんいたシオカラトンボ
今年の調査で確認されたトンボは、21種534頭(※)でした。2017年の17種361頭(※)よりも4種多く、個体数は約1.5倍でした。月間の確認種数は毎月、2017年の種数を上回っていました。調査するたびに、トンボの種類が昨年よりも豊かになっていることを実感できました。

※アメリカザリガニ防除活動の際に確認された個体も、任意調査の記録として含まれています。
月ごとの出現種と個体数(2018年)
月ごとの出現種と個体数(2017年)
月ごとの種数比較

トンボが増えた理由として、4つの要因が考えられます。

  1. ヤゴを食べる外来魚のブルーギルやコイを取り除いたことで、ヤゴの生存率が上がった。

  2. 水生植物が再生したことにより、トンボの食物となる生物が増加した。植物に産卵する種類のトンボの産卵環境が好転した。

  3. 浅場の拡充により、トンボの生息環境が増加した。

  4. 定期的なかいぼりにより、水質が比較的良好に維持されている。

井の頭池では、かいぼりのたびにコンクリート護岸の地先に浅場を整備し、水生生物の成育基盤を増やしてきました。こうした浅場では、オオシオカラトンボやマユタテアカネなどの産卵が確認されています。

浅場で産卵場所を探すシオカラトンボのメス
シオカラトンボは世代交代が早く、初夏に産み落とされた卵が盛夏には成虫になります。8月に本種が多く確認できたのは浅場整備の効果だとも考えられます。ギンヤンマの確認個体数を昨年と比べると大幅に増加しました。
水面に浮かぶ植物に産卵するギンヤンマ
初記録のタイワンウチワヤンマ(在来種)
分布域が東進中。東京辺りが最前線です。
かいぼりをはじめとするいろいろな取組みによってトンボが増えたことは大きな成果ですが、浅場の面積や水生植物の生育範囲は、池全体からすれば十分な量ではありません。さまざまな生きものにとってよりよい生息環境が整うように、引き続き井の頭池の自然再生に取り組んでいきたいと思います。

お問い合わせ

建設局西部公園緑地事務所 工事課 0422-47-0192
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