平成6年の天候は、ほぼ1年を通じて全国的に気温が高めに経過し、全国平均の年平均気温は1946年以後では、1990年に次いで2番目の高温となった。
また、春以後はほぼ全国的に少雨の状態が続き、夏の少雨は顕著であった。東日本や西
日本ではほぼ1年を通して降水量の少ない状態が続いたにもかかわらず、東京地方では、局地的な大雨による被害が数回にわたって起こった。
平成6年の降雨量は、気象庁東京管区気象台・東京観測所(千代田区大手町)によると
1,130.5mmで記録的な夏の高温、少雨の影響で、平年(平年とは、昭和36年から平成2年までの30年間の平均値であり、平年値は、1,405.5mmである)の約80%程度の雨量であった。
都における水害被害(一般資産被害)は、7回(7月7日、7月12日、7月18日、7月23日、8月20日〜21日、9月5日、12月27日)となっている。
特に、7月18日の大雨、8月20日〜21日大雨の2回にわたって水害被害が大きかった。
〔7月18日 大雨〕
関東地方上空に寒気が入り込んだ影響で大気が不安定になり、局地的な雷を伴った大雨に見舞われた。
池上観測所あたりの60分最大降雨量は62mm(18日13時10分〜18日14時10分)に達した。
荒川あたりでは18日14時30分〜15時30分の60分間に58mmの雨量が記録された。
大雨の影響で、JRのダイヤガ大きく乱れたほか、道路冠水などが相次いだ。JRでは足止めされた乗客のため、首都圏などで終電以降の臨時電車を運転するとともに東京駅、新大阪駅、京都駅で列車を就寝場所に提供する列車ホテルを設けた。
空堀川の高木橋観測所では、最高水位が天端高を0.1m越え、狭山橋観測所では、最高水位が天端高を0.46m越えた記録が見られた。また、神明橋・中砂橋水位観測所では、午前6時〜7時頃、最高水位が護岸天端高よりそれぞれわずか0.12m、0.17mの下がりであった。
都内では、一般資産被害面積は7.57ha、被害棟数263棟(その内、床下239棟、床上24棟)に達した。
〔8月20日〜21日 大雨)
東日本から西日本の各地で20日から21日にかけて、雷を伴った局地的に強い雨が降っていた。東京23区でも20日の昼過ぎから夜半まで、所々で激しい雷雨に見舞われた。
降雨量が最も大きかった所は足立区、世田谷区等である。南綾瀬と世田谷両観測所で観
測された60分最大降雨量はそれぞれ100mm(20日21時40分〜22時40分)、61mm(20日14時〜15時)であった。
川口川における片井戸水位観測所では、夜23時50分頃、最高水位が天端高からわずか0.11mの下がりであった。
激しい雷雨による住宅への浸水や道路冠水等の被害が出たほか、浜松町と羽田空港を結
ぶ東京モノレーが一時停止した。落雷による停電、火事等の被害も相次いだ。
都内では、一般資産被害面積1.19ha、被害棟数56棟(その内床下が37棟、床上が19棟)であった。
また、公共土木施設被害は道路冠水や堤防破損などが原因で6ケ所にのぼった。
総じて、平成6年における水害の被害規模(一般資産被害)の総計は被害面積15.35ha、被害棟数641棟(この内、床下556棟、床上85棟)であり、また、公共土木施設被害と公益事業被害も出て、公共土木施設被害は合計24ケ所、公益事業被害は2ケ所であった。
なお、平成6年における一般資産被害回数は7回で、過去5ヶ年における一般資産被害
回数は、平成1年6回、平成2年7回、平成3年10回、平成4年4回、平成5年5回であった。昭和49年から平成6年までの21年間の一般資産被害規模平均値は、被害面積462.18ha、被害棟数9,221棟(その内、床上7,469棟、床下1,735棟)である。
本資料は、「水害統計調査」をもとに、都で観測されている雨量・水位及び気象庁の速報天気図等を参考に被害のあった全水害を収録したものである。
なお、水害統計調査に際して御協力をいただいた関係者の方々に深甚なる謝意を表すと共に、より一層の御協力をお願い申し上げる次第である。
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