『ライチョウの飼育』
恩賜上野動物園 高橋 幸裕
日本の動物園におけるライチョウの飼育は、江戸時代から記録が残っています。近年では1963〜2004年まで大町市山岳博物館でニホンライチョウの飼育を行ってきましたが、現在は中断されています。高山帯に生息するニホンライチョウは低地の細菌や寄生虫に対する抵抗力がありません。そのため飼育することが難しい鳥の一つです。上野動物園では2008年の6月〜7月に北極圏にあるノルウェー・トロムソ大学に職員を派遣し、ライチョウの共同研究を開始しました。トロムソ大学は1972年からライチョウの飼育を開始し、飼育技術が確立されています。トロムソ大学での研修終了後に、同大学で産卵したスバールバルライチョウの卵を譲って頂きました。譲って頂いた卵は上野動物園のふ卵器に入れて、2008年8月5日人工ふ化に成功しました。2010年からは富山と長野の動物園、東京の多摩動物公園に個体を分散し、共同飼育を開始しています。将来的にはスバールバルライチョウの飼育で得られた知見が、ニホンライチョウの保全につながればと考えています。
【冬羽のライチョウ】 | 【0日齢】 |