『干潟のシンボル トビハゼ 特設展開催中』
葛西臨海水族園 田辺信吾
現在、葛西臨海水族園では特設展「はまったらぬけだせない! 干潟の誘惑 〜東京湾のトビハゼとその仲間たち〜」を開催しています。頭上に突き出た愛嬌のある大きな目をして、干潟をピョンピョンと飛びはねるユーモラスな魚トビハゼ。陸上での生活に適応し、その姿と行動が人の目を引きつける干潟のシンボリックな存在といえるでしょう。
トビハゼがくらす干潟は、平らで隠れ場所も少なく、何も生き物がいないように見えます。でも、実は干潟の表面には珪藻など目に見えない微小な植物が繁茂していて、これを二枚貝やゴカイ・カニなどが餌とし、さらにこれらを食べに水鳥がやってくる、といった多様な生き物による食物連鎖が見られます。干潟はこの食物連鎖の過程で汚れた海水を浄化し、江戸前の豊かな幸をもたらすなど、私たちのくらしへ繋がる重要な場なのです。
そんな干潟を見渡してみるとほら、カニが作る小さな砂団子、ゴカイが排泄して作るモンブランケーキのような形の糞など…。直接生き物は見えなくても、干潟には様々な生き物がくらす目印があります。特設展では、これらの生き物探しのコツをこっそりお教えします。
東京湾は国内最北のトビハゼの生息地で、生物地理の上でも重要な場所です。かつて東京湾奥部に広がる干潟にたくさんいたトビハゼは、戦後の都市化に伴う浅海部の埋め立てで、その数が激減しました。近年、水族園を含め博物館など8施設が協力し、東京湾のトビハゼの保全活動を行っています。水槽内での繁殖や周辺干潟の調査など、水族園が行っているトビハゼ保全の取り組みも紹介します。
この夏はこの特設展(10月31日まで)をみて、身近な干潟に遊びに行ってみてはいかがでしょうか?