『ニホンツキノワグマの冬』
恩賜上野動物園 多田和美
まだまだ寒さが厳しいこの季節。動物園では、眠ってすごしている動物がいます。上野動物園のクマたちの丘では、ニホンツキノワグマの「ウタ」が冬眠中です。
野生のツキノワグマが冬眠することは、知られていますが、一年中餌があり、暖かい場所も用意できる動物園のツキノワグマも冬眠させることができます。
冬眠する生態は動物園のツキノワグマにもあり、秋になると自然に食欲が増し、脂肪を蓄え、冬には動きが鈍くなります。この生態に合わせて、2頭のツキノワグマのうち1頭を通常の放飼場とは別の、人為的な環境下で冬眠させ、その姿を観られる展示を行っています。
動物園で冬眠させる為には、それに耐えられる体作りが大切です。
9月から12月中旬に、通常与えている餌を、ドングリやオニグルミなどの木の実や、サツマイモを中心に徐々に増やし、体重を20kg以上増やして冬眠に備えます。今年冬眠している個体は55kgだった体重を82kgまで増やしました。いよいよ冬眠させるときには、冬眠ブースと呼ばれる−5℃まで下げられる部屋へ誘導し、徐々に餌を減らし、絶食して冬眠させるのです。ブース内にはカメラが付いていて、冬眠中の様子をリアルタイムでモニターで観る事ができます。
冬眠中はずっと寝ているわけではなく、伸びをしたり、寝返りを打ったり、藁をかき集めたりと、一日の中でも時々起きています。
一方、通常の放飼場には、冬眠させていない個体が、ふっくらとした体を携えて、ゆっくりと過ごしている姿が観られます。
この時季ならではの、ツキノワグマの様子を是非、上野動物園に観にきてください。