親子で模様が変わる魚:タテジマキンチャクダイ
葛西臨海水族園 飼育展示係 笹沼伸一
ウズマキ模様が印象的なこの魚はタテジマキンチャクダイの幼魚です。濃紺の体に白い線や同心円状の模様が入りますが、これは幼魚の時期に特有のもので、成長につれてウズマキから成魚のタテジマ模様へ変わります。
成魚は群青色と黄色の縞模様が体一面にあり、名前どおりの「タテジマ」となります。(魚の場合は頭から尾に向けて入る縞模様がタテジマとなります)。全長約40センチになる色鮮やかな大型のキンチャクダイで、英語ではエンペラー(皇帝)エンゼルフィッシュと呼ばれます。
タテジマキンチャクダイは幼魚と成魚では別の種と思えるくらい模様が違いますが、これは個体間の闘争を避けることに役立っていると考えられています。成魚は普段、単独で行動して自分の縄張りを持ち、近づいてくる同種の成魚に攻撃を仕掛けます。しかし幼魚は縄張りに入り込んでも追い払う対象とは見なされず、攻撃されることなく安心してくらせるというわけです。
葛西臨海水族園では特設展示「海のゆりかご」を開催し、タテジマキンチャクダイの幼魚は展示水槽で忙しそうに何かをついばみながら自由気ままに泳いでいます。6月にはサンゴやサンゴ礁にくらす生き物を紹介するハンズオン展示を新設しましたので、一度来園された方も再びご覧いただければと思います。