平成5年水害概要
 

 平成5年の天候は、7年連続の暖冬、鹿児島県を中心とした「平成5年8月豪雨」、梅雨明けのないままの低温・長雨・日照不足による1954年以来の大冷夏、戦後最大級の台風13号の上陸を始め、最多の6個の台風上陸など気象の揺らぎが大きかった年であった。
 平成5年の降雨量は、気象庁東京管区気象台・東京観測所(千代田区大手町)によると1,872.5mmで梅雨前線、台風等の影響で、平年(平年とは、昭和36年から平成2年までの30年間の平均値であり、平年値は、1405.5mmである)の約1.33倍程度の雨量であった。
 都における水害被害(一般資産被害)は、6回(6月21日、7月25日、8月1日、8月27日、9月4日、11月13日)となっている。
 特に、6月21日の雷雨、8月27日の台風11号の2回にわたって水害被害が大きかった。
 
〔6月21日 雷雨〕
 梅雨前線に向かって北西から強い寒気が流れ込んで、大気の状態が不安定になっていたため、発達した雷雲が関東を中心に局地的な大雨をもたらした。
 降雨量が最も大きかった所は練馬区、板橋区や葛飾区等である。水元と志茂橋両観測所で観測された60分間最大降雨量はそれぞれ74mm(14時30分〜15時30分)、72mm(13時50分〜14時50分)であった。
 矢崎橋の水位観測所では、夜8時40分頃、最高水位が天端高から1.08mの下がりであった。
 激しい雷雨による住宅への浸水や道路冠水等の被害が出たほか、水難救助や火事もあった。また、落雷による停電、火事等の被害が相次いだ。一般資産被害面積35.96ha、被害棟数835棟(その内床下が517棟、床上が318棟)であった。また、公益事業被害も道路冠水が原因で1ヶ所であった。
 
〔8月27日 台風11号〕
 南海上で発生した弱い熱帯低気圧は台風11号となって、27日には中型で強い勢力で千葉県銚子市付近を通過し、本州の東海上を北北東進した。台風接近に伴い、関東各地は強風・大雨に見舞われた。
 
 上目黒あたりの60分最大降雨量は66mm(27日12時10分〜27日13時10分)に達した。葛飾あたりで27日12時〜13時の間に総雨量76mmが記録された。
 大雨の影響で、JR線は首都圏のほぼ全域でマヒ状態となった。地下鉄も主要路線が線路の冠水で止まったほか、都心部の道路も各所で寸断された。夜まで電車の主要路線が復旧せず、帰宅の足も混乱した。
 都内では、一般資産被害面積は342.00ha、被害棟数7,533棟(その内床下が5,079棟、床上が2,454棟)に達した。
 谷沢川観測所では、最大水位が天端高を0.62m越え、毛長橋観測所では、最大水位が天端高まで上がり、溢水となった。また、朝日橋・狭山橋水位観測所では、午後1時40分頃、最大水位が護岸天端高よりそれぞれわずか0.12m、0.16mの下がりであった。
 
 総して、H5年における水害の被害規模(一般資産被害)の総計は、被害面積389.93ha、被害棟数8,669棟(この内床下5,802棟、床上2,867棟)であった。また、公共土木施設被害と公益事業被害も出て、公共土木施設被害は23ヶ所、公益事業被害は8ヶ所であった。
 なお、H5年における一般資産被害回数は6回で、過去5年間における一般資産被害回数は、63年5回、H1年6回、H2年7回、H3年10回、H4年4回であった。昭和49年から平成5年までの20年間の一般資産被害規模平均値は、被害面積484.51ha、被害棟数9,650棟(その内、床上7,815棟、床下1,835棟)である。
 
 本資料は、「水害統計調査」をもとに、都で観測されている雨量・水位及び気象庁の速報天気図等を参考に被害のあった全水害を収録したものである。
 なお、水害統計調査に際して御協力をいただいた関係者の方々に深甚なる謝意を表すと共に、より一層の御協力をお願い申し上げる次第である。

平成5年水害一覧
月 日 原 因 一般資産被害 公共土木
施設被害
公益事業
等被害
浸水面積
(ha)
浸水棟数(棟) 合計
(棟)
床下 床上
6月21日 集中豪雨 35.96 517 318 835  
7月25日 台風4号 0.57 5 15 20  
8月1日 集中豪雨 6.38 123 57 180    
8月27日 台風11号 342 5,079 2,454 7533
9月4日 台風13号 0.01 0 1 1
11月13日 集中豪雨 5.40 78 22 100  
合 計   390.32 5,802 2,867 8,669