『東京が好き!キンクロハジロ』
井の頭自然文化園 池田 正人
キンクロハジロという水鳥をご存知ですか?都会でも身近な所にいるのに、多くの方々には単にカモとしか認識されていないようです。しかし、金色の眼に真黒い頭、雄にはちょん髷のような冠羽。良く見るとおなじみのカルガモなどとは行動や姿形がかなり異なります。
カルガモやマガモなどは、水に浮いていても滅多に潜ることはありませんが、“カルガモ親子のお引っ越し”でも知られているようによく陸上を歩きます。餌は、陸上や水面あるいは首を水中に突っ込んで水中のものをあさります。一方、キンクロハジロやスズガモなどはいわゆる「潜水ガモ」とか「海ガモ」と呼ばれ(これに対し、マガモなどは「淡水ガモ」と呼ばれる )、主に潜って餌を採ります。そのため、水中で泳ぎやすいよう淡水ガモにくらべて足がお尻寄りにあり、大きさの割に体重も重めです。しかし、体が重いということがあだとなり、「淡水ガモ」はその場で飛び立つことができるのに「潜水ガモ」は水面でかなりの距離を助走しないと舞い上がることができず、周りが開かれた大きな池や川でしか見ることができません。
初めの方でこの鳥が身近な所にいると書きましたが、実は東京都は、渡り鳥であるキンクロハジロの東日本における有数の飛来地になっているのです。特に都市公園や庭園の池は彼らの重要な受け皿になっています。今年1月12日に実施した井の頭池でのカモ類の調査でもオナガガモ、カルガモに次いで 3 番目に多い 22 羽が確認されました。
とは言え、2005年には200羽近く見られたものの、年々減少の一途をたどっています。いま、キンクロハジロが都市における自然環境とは何かを問いかけているような気がします。