昭和49年水害概要
 

 昭和49年の主な水害は、7月20日の集中豪雨による神田川、石神井川沿川の被害と9月1日の台風16号による西多摩および南多摩地域の被害とに代表される。
一方、9月1日の台風16号は、奥多摩町において最大時間雨量48mm、総雨量は500mmをこえる降雨があり、各地に水害が発生した。なかでも、多摩川は計画高水流量を上回る大洪水となり、狛江市猪方地区で堤防が決壊し、民家19棟が流出したことは記憶に新らしいことである。これらの水害のほかに中小の災害を含めると、1年間に12回の水害が発生するという都市河川の受難の年であった。
このように都市河川の水害が多発したのは、経済の発展、人口の集中、都市の膨張といった、いわゆる都市化に伴ない流域に不浸透域の増加、湛水域の減少といった保水能力低下によるもので、洪水流出量、とくにピーク流量の増大をまねく結果となった。これに対して都市排水の基幹的施設である都市河川の整備がたち遅れているためである。
東京の中小河川は1時間50mmの降雨に対拠する改修事業を進めているが、近年の地価の高騰、物価、賃金の上昇は、改修事業費の伸びをはるかに上回り、併せて、用地取得が一段と固難をきわめていることから事業の進捗をいちじるしく阻害している。このため昭和48年度末の改修率は約8%にすぎない。このような現状にあるので河川改修計画、改修工事、水防等に一層努力を重ねるとともに、河川に関する資料の整備が急がれている。
本質料は昭和49年の水害統計調査をもとに作成したもので全水害が収録されている。なお、水害統計調査にさいし御協力いただいた関係区市町村に深甚の謝意を表わすものである。

昭和49年水害一覧
月日 原因 一般資産被害 公共土木
施設被害
公益事業
等被害
浸水面積
(ha)
浸水棟数(棟) 合計
(棟)
床下 床上 半壊
6月9日 集中豪雨 307.20 5,294 64 0 5,358    
6月18日 集中豪雨 25.90 218 6 0 224    
7月7日 台風8号 38.60 789 70 0 859
7月10日 集中豪雨 43.00 625 27 0 652  
7月20日 集中豪雨 130.60 2,774 861 0 3,635    
8月1日 集中豪雨 52.20 1,313 118 0 1,431    
8月14日 集中豪雨 8.80 246 0 0 246    
8月24日 台風14号 4.70 38 1 0 39  
8月27日 低気圧 8.80 170 0 0 170    
9月1日 台風16号 54.20 812 61 0 873  
9月4日 集中豪雨 3.30 128 2 0 130    
9月9日 台風18号 67.20 1,357 90 0 1,447    
合計   744.50 13,764 1,300 0 15,064